ドッグフードの栄養添加物(硫黄鉄)
鉄は血液内で酸素の運搬を行うヘモグロビン、筋肉内で酸素を貯蔵するミオグロビンの一部となる重要なミネラルで、体内ではタンパク質と結合した形で存在しています。食品の中では動物性食材ならレバーや赤身肉、赤身の魚や貝類、卵や乳製品などに多く、植物性食材ではほうれん草や小松菜、ひじきや大豆などに豊富に含まれています。
ドッグフードには上記の食品を含め、栄養強化剤として合成された鉄が使用されていることがあり、硫黄鉄や硫化鉄、クエン酸鉄やピロリン酸鉄など様々な形の鉄剤が使用されています。
ヘム鉄と非ヘム鉄について
食品の中に含まれる鉄分は、そのままの形で吸収できるため体内に取り入れやすいヘム鉄という種類と、吸収しにくい非ヘム鉄という種類が存在します。ヘム鉄は非ヘム鉄の2~3倍ほど吸収しやすいと言われています。
大まかにヘム鉄はドッグフード内の食材では肉や魚、畜肉副産物などに多く、非ヘム鉄は植物性の食材や卵、乳製品などに含まれることが多いと言われています。
またサプリメントとして利用される鉄分も、多くは非ヘム鉄だと言われています。
そのため吸収しにくい非ヘム鉄が使用されている場合は、非ヘム鉄の吸収を促進してくれるビタミンCやクエン酸、酒石酸、乳酸などが一緒にとれる原材料を使用しているフードを選ぶのがおすすめです。
また鉄分の吸収を阻害する成分にはカルシウムやフィチン酸、ポリフェノールなどがあります。
これらが多く使用されているフードは鉄分の吸収率が悪くなる可能性があります。
体内の非ヘム鉄について
非ヘム鉄は主に植物性の食材に多いと言われる鉄分ですが、動物の体内にも存在し、主に細胞内に存在するタンパク質・フェリチンや、細胞内・細胞間隙に存在するヘモシデニンに含まれています。体内の非ヘム鉄は貯蔵鉄として肝臓、脾臓、骨髄、筋肉に分布しており、鉄の補給量が増えると蓄積される割合も高まります。
鉄の消化率について
鉄の見かけの消化率は約20%ほどだと考えられていますが、実際は使用する鉄剤の違いによって大きく異なり、10~100%ほどの幅があると言われています。ちなみにドッグフードに着色料として使用されることが多い鉄剤には酸化鉄がありますが、この鉄剤は生体内ではほとんど利用されていないことがわかっています。
ドッグフードに含まれている鉄分について
ドッグフードの成分分析では、生体で利用可能な鉄と生体で利用できない鉄との両方の成分量が分析値に反映されてしまいます。そのため生体で利用できない鉄分は分析値に出てきても、鉄分だと考えてはならないとドッグフードの栄養基準では定められています。
ただし鉄剤は選ぶ種類によって消化率も大きく異なり、上記のように利用できない鉄も分析値に反映されてしまうことから、鉄剤を多めに配合したり、吸収率の高い鉄剤を使用したりすることがあり、その場合には鉄の過剰症が出る恐れがあると言われています。
そのため着色料として酸化鉄を使用していたり、吸収率の高い鉄剤を使用していたりするフードでは、鉄の過不足について問題がないかどうか、犬の体調をよく見て観察しておくのがおすすめです。
鉄の過不足症状について
ドッグフードには鉄分の多い動物性食材をよく使用し、栄養添加物として鉄剤も含まれているため、一般的なペットフードを与えている場合、鉄の欠乏も過剰も起こりにくいと言われていますが、体調不良時は何らかの疾患を抱えている犬では起こす可能性があると言われています。また犬の乳には鉄分があまり多くなく、授乳中の幼犬も鉄の摂取量が要求量を下回ることが多く、特に大型犬でこの傾向が大きくなりやすいと言われています。
そのため幼犬には鉄を貯蔵させておくため、お腹の中にいる頃から母犬に十分量の鉄を与える必要があるそうです。
鉄欠乏時の症状として有名なのが鉄欠乏性貧血です。
犬の体調が優れず鉄分不足が疑われる時は、獣医師に診断を受けると同時に、適切な食事についても相談を行っておきましょう。
また鉄が過剰な時は食欲不振や体重減少、血清アルブミンの減少などが起こると言われています。
上記の通り、ドッグフードを与えている犬では稀にしか起こらない症状だと考えられていますが、不足時と同様疑いがある時は獣医師に診断を受けると同時に、適切な食事についても相談を行っておきましょう。