ドッグフードの製造方法の基準
ペットフード安全法により、ドッグフード製造業者には有害な物質や微生物がフードに混入しないような製造方法の基準を守ることが求められています。安全なペットフードを製造するための基準として、定められているのは以下の3つです。
(1)有害物質や病原微生物により汚染された原材料、またはこれら疑いのある原材料を用いないこと
(2)ペットフードを加熱・乾燥する際は、微生物を除去できる十分な効力がある方法で行うこと
(3)プロピレングリコールを猫用フードに用いないこと
上記3つの内、ドッグフードに関わりの深い基準が(1)と(2)です。
この基準を守るために、どのような対策が行われているのかについてご紹介します。
有害物質に汚染された原材料を、フードに使用しないための取り組み
有害物質に汚染された原材料がフードに混入するのを防ぐために、具体的には以下のような手順や取り組みを行うよう製造業者に提案されています。・ペットフード安全法の基準を満たせる原材料について、規格を設定する
・上記規格を満たせる原材料の調達先を決定する
・原材料を受け入れる際は、上記調達先・規格を満たしているか照合してから受け入れる
・受け入れ時に規格を満たさない原材料は、不適合品として処理する
・定期的に原材料調達先を訪問し、作業内容や製造記録の監査を行う
・原材料の管理について記録を残しておく
また輸入フードに対しては、以下のような取り組みを行うよう提案されています。
・輸入フードについては、輸入前に有害物質に汚染されていないか担当者が確認すること
・輸入前にペットフード安全法による成分規格を満たしているか、分析に出して確認すること
・輸入後に品質基準を満たしたフードか再度確認すること
またその他には、製造工場内での有害物質混入を防ぐために設備の適切なレイアウトを行うこと、製造ラインの洗浄計画や清掃しやすいレイアウトを考えること、工場内で使用する薬剤は施錠管理を行うことなどが求められています。
微生物に汚染された原材料を、フードに使用しないための取り組み
病原微生物に汚染された原材料をフードに使用しないようにするためには、上記手順や取り組みに加えて以下のような取り組みも求められています。・原材料を受け入れる際に、梱包に乱れや汚れがないかどうか、色・臭い・性質や状態に異常がないか、また水濡れや吸湿がないかなどを確認すること
・冷凍された原材料は、保管中の温度を管理し記録すること。
また解凍時には上記同様原材料に異常が見られないか確認すること
・穀物や植物性の原材料は輸送中にカビ毒に汚染されることがあるため、受け入れ時にカビ毒を測定したり、業者からカビ毒検査結果などの情報を入手したりすること
また上記以外では工場内での微生物汚染を防ぐため、工場内の適切なレイアウトや洗浄計画を考えることはもちろん、工場内の害虫・害獣駆除に努めることなどが求められています。
フードの加熱・乾燥時に行う、有害微生物除去への取り組み
安全なペットフードを製造するためには、有害微生物をしっかり除去できる温度・時間で加熱や乾燥を行うことが重要です。また水分含有量が多く、微生物が繁殖しやすいフードを製造する場合は、気密性の高い容器を使用することや、水分活性をコントロールする添加物を使用することなどが求められています。
具体的には、以下のような取り組みが求められています。
(ドライフードの場合)
・加熱する時は、微生物の生存を防止するための条件(加熱温度や時間、圧力)を守ること
・結露を防止するため、加熱後はしっかり冷却すること
・微生物が繁殖しにくいようにしっかり乾燥を行うこと
・完成品を貯蔵する場合は清浄な状態を維持するために、温度管理や換気などを行うこと
・梱包後も温度・湿度管理、水濡れなどに注意すること
(ソフトドライ・セミモイストフードの場合)
ドライフードよりも水分含有量の多いソフトドライ・セミモイストフードでは、上記に加えて以下のような取り組みが求められます。
・微生物増殖防止のために添加物を使用する場合は、むらなく均一に混合すること
・完成品を包装する際は、微生物増殖を防ぐため包装をしっかり行うこと。また脱酸素剤を封入する場合は確実に投入を行い管理すること
(ウェットフードの場合)
水分含有量の多いウェットフードでは、さらに以下のような取り組みが必要です。
・容器にフードを充填する工程の製造ラインを清潔に保つこと
・容器を密封する時は脱気をしっかりと行い、容器の変形や密封不良に気をつけること
・容器の気密性を維持するためにしっかりと密封・包装すること
・冷却水を利用して製品を冷やす場合は、冷却水から微生物が混入するのを防ぐため、冷却水の塩素濃度を管理すること
安全・安心なペットフードを製造するためには、様々な取り組みが必要になります。
実際、フード製造現場を消費者が間近で見る機会はなかなかありませんが、上記のような工程を経てフードが作られているかどうか確認することで、より安心で安全なフードを選びやすくなるかもしれません。